グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉

透き通る空に穏やかな海。避暑地に相応しい港町。そこに暮らす、ゲストと呼ばれる人間たちをもてなすことが役割とされていながらも、様々な年齢性別体格性格を設定されそれぞれの終わらない人生を続けるAI。

風景の描写が美しかった。爽やかな潮風がべっとりと吹き付け、金属の錆を呼ぶ。ガラスだと思って触れたら、その部分からどろどろとした汚物に変わって全体が崩れていく。黒沢清の CURE を思い起こさせた。あと浦賀和宏も。

ただ、小さな謎がひとつ解けてしまった。わたしにさえ解けてしまった。解こうと思っていたわけではないのだが、ふと気がついてしまった。それだけで、本質はそこにないと思うのだが、しかし、詰まらなくなってしまった。

どうやらわたしは、謎が解けてしまうと、わたし程度にさえ解けてしまったそれという見方をするようだ。だから教えられたネタバレならば気にならないんだが、思い当たってしまったがために、それだけのことで、入り込んでいた気持ちがすっと抜けた。それが残念だった。

ブクログには☆半分がないので4つとした。できれば3.5をつけたかった。

あとブクログへの引用は初版からなんだが、登録の際に任意で版数を入れさせて欲しいと思った。版によって変わる可能性があるじゃないか。