空蜘蛛

小説屋Sari-Sariという無料の雑誌がある。予備知識なく「無料の電子書籍だから」という理由でダウンロードして読み始めたら驚いたほどに女性向けである。それはともかく、これに連載されているシリーズ「名探偵だって恋をする」。これは毎号違う作家による競作なので、シリーズではあるが話自体に連続性はない。

Kinoppy では1月遅れでリリースされているようで、現在手に入る最新号は2012年5月号。

その「名探偵だって恋をする」は「空蜘蛛」。著者は盤上の夜 (創元日本SF叢書)のそれでもある宮内悠介氏。この記事を見て、気になっていた作者だ。

教え子のコンクール出場に付き添った、フライト中の老音楽家。ふと開いた目に映ったのは、焼け焦げた室内に見覚えのない乗客たち。鳴り響くヴァイオリンはとても独創的な表現だが下手なわけではなく、むしろ名手の音色である。戸惑う老音楽家へ、近くの男が声をかける──。

面白かった。スピード感のある進行と冒険心をくすぐる舞台。先の本を早く読みたいと思うくらいに。この1編だけはこうして感想を書きたくなるくらいに。